黙秘

名画座・平成

名画座・平成のあるじ、平成平(たいらなりひら)でございます。
今日の映画は1995年の「黙秘」です。

原作がスティーブン・キング。
処女長編の「キャリー」を始め、「シャイニング」「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」「ミザリー」など50本以上が映画・TVドラマ化されていますね。

冒頭、富豪の女主人・ヴェラを、メイドのドロレスが転落死させた「ような」シーンから始まります。

ニューヨークの新聞社で記者として働くドロレスの娘・セリーナ。故郷の島から事件についての記事がファックスされて来て、ドロレスに確かめるためセリーナは島に帰ります。
一瞬セリーナと分からないドロレス--久々の母と娘の対面。お互いの、特にセリーナのわだかまりを感じさせます。
ドロレス「悪態つくのが生きるよすがでね」
セリーナも「悪態つくのが生きるよすがなの」・・

マッケイ警部の執拗な追及を受けながら、真相を聞き出そうとするセリーナ。しかしドロレスは無実を主張しながらも、肝心なことには口を閉ざすばかり。
どうやら20数年前の日蝕の日に起きた、ドロレスの夫の「事故死」が問題の背後にあるようです。

ここからシーンは現在と20年前の過去との間を行き来し始めます。現在はブルーグレーな色調で、過去は一転して鮮やかな絵画調とも言えるような色調で描かれます。現在の中に過去の人物が登場したり・・監督のテイラー・ハックフォード、脚本のトニー・ギルロイの語り口のうまさに、観客は映画に引き込まれて行きます。

20数年前の1970年代といえばまだまだ男性優位の社会、性差別の色濃かった時代。
おまけにドロレスの夫は、アルコール依存でDVなクズ男。そして娘に対しては性的虐待を・・
ドロレスは娘と自分の為にこれに果敢に立ち向かいます。
そして高慢で嫌な雇い主だと思っていたヴェラからも、女同士ならではのアドバイス・・
「悲しいけどこの世は男の世界なのよ。夫は死んで財産を妻に残す、私は経験済みよ。ドロレス、事故は不幸な女のいい友達よ。」
・・どうもこれが夫の事故死に関係がありそうな・・

まさに「母は強し」。娘を思う母親の愛と、認めるのがつらく心に封印していた少女の頃の体験を認める娘。
次第に母と娘の間のわだかまりが融けていきます。
そしてドロレスの非公開審理 に戻って来て立合うセリーナ。
「最後の10年間は孤独な2人が愛し合っていた。その相手を殺すはずがない」・・母の強い味方になる娘。

「黙秘(原題=ドロレス・クレイボーン)」」はキング原作ながらホラーではなく、極上のサスペンス・ドラマであり人間ドラマであり家族愛の物語です。

何と言っても母・ドロレス役のキャシー・ベイツの演技が素晴らしい。アカデミー主演女優賞を獲った「ミザリー」でも狂信的な読者を「怪演」して怖かったですね。
こんな人は日本の俳優にはいませんね、貴重です。
あえて言うと樹木希林・・でもないかな。女芸人の中にはこういう演技を出来る人がいるかも知れませんね。

余談ですが、「ミザリー」のオープニングシーン。
最後の1ページを叩くタイプライターの手前に・・
アイスバケツに入ったドンペリ、そしてそのそばに・・
自分へのご褒美の1本の煙草と1本のマッチ。
火をつけて、磨き込んだシャンペングラスにトクトクトク・・
・・なんて言うのも映画を観る楽しみのひとつですね。

イヤア、映画ってほんとーにいいもんですね。
それでは皆様、またお会いしましょう。


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