祭りの準備

映画

ハイみなさん、こんばんは。名画座・昭和のあるじ、昭和則(しょうかずのり)です。
今日の上映作品は皆さんお待ちかね、1975年の「祭りの準備」です。いいですねこのタイトル、期待させます。そして期待を裏切りません。面白く飽きさせない映画です。
どうぞじっくり御覧なさい。後でまた会いましょうね。

ベースの効いたテーマ曲で始まる「祭りの準備」は懐かしのATG作品です。
舞台は昭和30年代の高知県中村市(現四万十市)のはずれ。
強烈な台風にも見舞われる太平洋に望む漁村、工事用の土砂の採集地でもあります。

信用金庫に勤める主人公、楯男(江藤潤)は脚本家を目指しています。

職場(土砂の採集場)で出来た愛人の家を泊まり歩く夫(ハナ肇)に愛想をつかし、息子楯男に愛情という名の執着を寄せる母親(馬渕晴子)。

愛人(ノシ子)宅で息子に飯を食わせながら・・
「オレだっち若いころはまじめじゃったがぞ~。けんど、おなごが放っちょかんがの~」などと言う親父(ハナ肇)。でも息子はそんな父親が大好き。

母と息子は・・
「俺ァ 東京へ行くがや」
「楯男、お前はどこへもやらんぜ」
馬渕晴子もハナ肇も映画の中で生々しく生きています。

隣家の年上の友達で泥棒を繰り返す利広(原田芳雄)とその兄、兄嫁(杉本美樹)。
原田芳雄の男、というよりオスっぷりが超一級です。これだけでも映画を観る価値あり。
杉本美樹と言えば日活ロマンポルノ、二枚看板のひとり。いいですねー。利広と兄貴は「穴兄弟」だそうで・・

利広と楯男はこんな調子・・
「楯男ちゃん チン〇立ちよるか?」
「やめれっちゃー」
「何じゃわりゃー!シナリオたらゆーもん書いて、偉そうに」

「楯男ちゃん、背広作らんかの~」・・
身体の不自由な菊男は、自宅で背広作りの内職をしています。
利広は、菊男をバカにする女を蹴倒したりもします。友達思いでもあるのです。
楯男はある時、この菊男の家の秘密を垣間見てショックを受けます。

ヒロポンに脳を犯され、利広の妹・タマミが都会から帰って来ました。そして浜辺の舟で、夜な夜な男の慰み者に・・
寝苦しいある夜、楯男もパンツを脱ぎ捨て舟の中へ・・
とその時、タマミを奪い取ったのはおじい(祖父、浜村純)!
妊娠を知ったおじいは、タマミとすっかり夫婦気取り。
「うんと食えや、タマミ。子どもの分と二人分食わにゃ~」
・・ところが出産した途端、タマミは正気に・・
「あのじいさん 誰? 気持ち悪い」・・
「タマミー!なして正気にもどったがよー!」と嘆くおじい。
・・浜村純の狂いっぷりも見事です!

デビュー間もない竹下景子(涼子役)も忘れられません。
左翼運動の勉強会に楯男を誘い、リードしようとします。
「楯男さんはセックスのことばかりに異常に興味を持ちすぎるのよ」などと言いながら・・ オルグの男と簡単に寝てしまう・・
あとから・・
「私はあのひとと寝てしもおたのよ・・抱いて!」と来る。
・・一夜明けて・・
「私今日は勤め休も・・。楯男さんも休んで フフフフッ」
あげく、宿直の寝床に忍んで来て、目が覚めると火事に・・
優等生なことを言いながら結局、性欲優先、自分優先の女を見事に演じています。

そして旅立ちの日。
菊男さんが作った背広を着、カゴの鳥を逃がして家を後にする楯男。
それを見て叫ぶ母親「楯男ー!」
・・過ぎ行く村の風景、後にする楯男・・

駅で、強盗殺人の罪で手配中の利広に会う楯男。
「ゼニ貸しや 多い方がエエ」
しかし楯男の東京行の資金と知るや
「もらわれん もらわれん!」

楯男の背広を見て
「これ着てよー 東京の銀座を歩いてみよ。菊男さん大喜びぜよ」
そして・・
「バンザーイ バンザーイ!」と見送る利広。
やがて列車はトンネルに入り・・闇に残るテールライト・・

万感迫る、「別れ」「旅立ち」のシーンです。

獣たちのように生々しく、猥雑で、汗臭く、暑苦しく、そして滑稽な人間関係の中での青春の悶え。・・
「祭りの準備」はそれを黒木和雄監督が情緒豊かに、限りなく美しく描いた傑作です。
映画の中でみんな生き生きと呼吸しています。

ハイ時間来ました。
それでは次回をご期待下さい。サヨナラサヨナラサヨナラ


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