僕は昭和正(しょうかずまさ)。
昭和町一丁目一番地の昭和モータースで自動車修理をやっているんだ。三丁目で修理工やってる六ちゃんは1年先輩。
この間、イヤミさんからオイル交換を頼まれたのがシトロエン2CV。
ドゥーシーボーって言うんだってさ。
が、がいしゃだじょー。おフランスだじょー。
「シェーッ! 外車ざます。おフランスざます。
♪ルロロロ~ ♪かれ~は~よ~ かれ~は~よ~♪
ジュテーム トレビアーン
アザブジュウヴァーン ケツカセー シモブックレ
ミーはパリーのセーヌ川のほとりを気持ちよく走りたいざます。
だからとってもきれいなオイルに交換してちょ」だって。
イヤミさんっておしゃべりだなあ。
全部は実現できなかったけれど、この車を作るときの目標が・・
ガソリン3リッターで100km以上走れるとか、
カゴ一杯の生卵を載せて荒れた農道を走っても、1つも割れないとか、
車両重量300kg以下とか、厳しいものだったらしいよ。「こうもり傘に4つの車輪」がついてりゃいい、なんてことも言われたんだって。
車内スペースの余裕のためにシルクハットをかぶっても引っかからないように「ハットテスト」もやったんだよ。
新車ショーでは「醜いアヒルの子」「乳母車」とか「ブリキの缶詰」なんて言われたけど、その合理性が受けてすごく売れて、結局フランスの国民車になったんだ。
しかしこのシトロエン2CVはほんとにフランス車って感じだね。
三丁目の六ちゃんの店に行ったとき、「マドモアゼル、こんなクルマでシャンゼリゼやサンジェルマン大通りを走りたいね」って言ったら、
「このクルマ、ほんとにエンジン積んでるのけ?
風に吹かれてトコトコ走るボール紙のクルマみたいだべ」だって。
そこがいいと思うんだけどな。
そこがフランス車だと思うんだけどな。
あっ、社長が呼んでる。じゃあまたね。
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