嫌われ松子の一生

名画座・平成

名画座・平成、今日の映画は2006年の「嫌われ松子の一生」、中島哲也監督の作品です。

「生まれてすみません」と言いながら・・
「その瞬間、人生が終わったと思いました」だったのに・・
「でも気がつくと私は、歌を歌っていました」とミュージカルが始まるなんて・・

これほど悲惨な話をこれほどのエンターテインメントにするとは!
中島監督のストーリーテラー振りには脱帽です。
あの名作「下妻物語」をより豪華にサービス満点にした・・
分かりやすくて贅沢。ギャグもちりばめ、面白くて飽きさせない。しかも、濃密で厚みがあって奥深い。・・
思わず引き込まれてしまう、奇跡のような映画です。
こんな映画が出来上がるまでには、豪華な俳優陣、スタッフもさぞや大変だったと思います。

映画はいきなり渋谷、109のあたりで木村カエラの歌から始まります。
松子(中谷美紀)の甥・笙(瑛太)と柴咲コウのやりとり、片平なぎさの火曜サスペンス劇場と続き、笙の語りで話が進みます。

そして、「風と共に去りぬ」「王様と私」「ベンハー」などハリウッド黄金期を思わせるゴージャスなメインタイトル。もう、たまりません!

父親の愛を病弱な妹に奪われたと思い、百貨店のコメディショーで覚えた変顔で父親に取り入る松子。
ここから愛に飢えた松子の孤独な一生が始まります。
最後に、亡くなった父の日記に綴られた松子への思いに涙ぐんでも、もう遅かった・・。

中学教師の松子は、修学旅行先での盗難事件がもとで職を失い、転落の人生が始まります。教え子・龍洋一(伊勢谷友介)との因縁もここから・・
テーマ曲は、♪まげてのばして♪

「女の子なら誰だって、白雪姫やシンデレラ。そんな可愛いおとぎ話に憧れるもんさ。それがどこで歯車が狂っちまったか、白鳥に憧れてたのに、目覚めると真っ黒なカラスになっていました」・・

太宰治の生まれ変わりを自認する作家の卵には「せめて金運んで来い!ト〇コで働け、バカおんな!」などと罵倒されても・・
「殴られても殺されてもいい、ひとりよりはマシ」と歯を食いしばり、幸せを求め続ける松子。好きなひとにはたまらない!昭和テイストも満載です!
百貨店屋上の遊園地や歌謡ショー、万博ネタ、「オズの魔法使い」のパロディ、アポロ11号の月面着陸など、・・たまりません!
歌謡ショー「恋なんて♡嘘」の歌手は「小川マリア」・・「オ~モ~レツ!」の小川ローザと安西マリアの合体では?・・なんて。
しかも、眼帯はめた松子と入れ替わるなんて!サービス満点です。

「きみの身体はすごく良かった」 と言いながら男に捨てられ、「なんでー?!」と叫びながらも・・また歌を歌っている松子なのでした。
身体に自信を持った松子はト〇コ嬢に再挑戦。
綾乃(BONNIE PINK)との二枚看板で稼ぎまくるが、やがて斜陽化の波が・・
雄琴で組んだ男(武田真治)をひょんなことから殺してしまい、刑務所へ。この刑務所生活もミュージカル仕立て。
ここで沢村めぐみと知り合い親友に。・・
沢村めぐみは出所後、AVで大活躍。
タイトルは「未亡人は超淫乱」。松子の甥の笙はこれがお気に入り。
そしてヤクザになっていた教え子・龍洋一との再会。
これが松子の悲惨生活の極めつけに。・・

松子の最後は、光ゲンジだけが頼りの自閉生活。
そして、 松子の死。・・

黒澤明監督の「醜聞(スキャンダル)」に、クリスマスイブのキャバレーで、ダメ弁護士の志村喬、画家の三船敏郎、左卜全をはじめ、サラリーマンや、刺青のお兄さん、ホステス達も・・それぞれが「蛍の光」をワンフレーズづつ歌い継ぐ、というシーンがあります。悲喜こもごも、ひとりひとりが思いを込めて歌ういいシーンです。
この映画のエンディングでも出演者総登場で、♪まげてのばして♪をワンフレーズづつ歌い継ぐシーンがあります。
もしかすると黒澤監督へのオマージュかもわかりません。

「嫌われ松子の一生」は、エンドロールのバックにも手を掛けています。
本編映像のモンタージュも使っているけれど、MV風のオリジナル映像も盛りだくさん。これが楽しめます。

イヤア、映画ってほんとーにいいもんですね。
それでは皆様、またお会いしましょう。


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