この森で天使はバスを降りた

名画座・平成

名画座・平成、今日の映画は1996年の「この森で天使はバスを降りた」です。
監督がリー・デヴィッド・ズロトフ、オリジナル脚本もこの人、これがすごい。

チャック・ベリーの名曲「ジョニー・Bグッド」
「バックトゥザフューチャー1作目」の「深海パーティー」でマーティが演奏し、調子に乗ってみんなを唖然とさせましたね。

アメリカの負の歴史、ベトナム戦争。
多くの若者たちが、まともに生きられない程に心に傷を負いました。

さて・・

原題は「The Spitfire Grill」
アメリカ北東部メイン州の田舎町ギリアドの、ただ一軒の食堂の名前です。ギリアドは「神が最も美しい土地だと降臨した」というインデアン伝説のある森の町。

傷害致死で5年間の服役を終え、ギリアドでバスを降りたパーシー。

老いの進む身体で食堂「The Spitfire Grill」をひとり営むハナ。
ハナの亡くなった夫は第二次大戦の英雄。「Spitfire」は当時活躍した戦闘機。町の期待の星であった息子イーライは、志願してベトナムに行き消息を絶ったとされていますが、実は「森に住む謎の男」となっています。
ハナは長年この食堂を売りに出していますが売れません。
パーシーはここに住込みで働くことになります。

ハナの甥ネイハムと彼に馬鹿にされがちな妻、シェルビー。
パーシーに一目で恋をする青年、ジョー。

ネイハムを筆頭に、よそ者、前科者に冷たい田舎町の人々。

やがて打ち解けていくシェルビーにパーシーは語ります。

「この州の歴史を調べていたら こんな話があった。
先住民の女性が 赤ん坊とカヌーに乗っていた。
酔った船乗りたちがそれに目を留めた。
先住民の赤ん坊は生まれつき泳げるという噂があったの。
彼らは試してみようとしてカヌーを転覆させた。
赤ん坊は川底に沈んだわ。母親のことは書いてなかった。
一緒に溺れたのなら そのほうがいい。そう思わない?」

そして実は・・という話。

「母が再婚した男は、9歳の時から私に目をつけた。
母も男を失いたくなくて男に協力した。
私は16歳で妊娠したの。
ひどい行為の結果でも生命が宿ったのはうれしかった。
男でも女でもいい名前、ジョニー・Bと決めていた」
「ある日男は酔って暴力を・・そして・・」
「・・赤ちゃんを守れなかったから、
きっと神様は許してくれないと思ったの。
・・赤ん坊が死んで良かった。うっかりできた子だし。
タンスの上にカミソリがあったの・・
殺すのが遅すぎたわ。それで刑務所に入ったの」

この話は使われなくなっている教会で語られます。
象徴的ですね。

・・だからジョーともこんな話になります。

「君が初めて町に来た夜、何かいいことが起こるような気がした。
その〈いいこと〉っていうのは君なんだ。結婚して欲しい」
『子どもは欲しい?』
「欲しいよ 君の望むだけ欲しい」
『私には子どもが産めないの』
「だったら要らない」
『ダメよ あなたにはピッタリの女性がいるわ。
でも私じゃないの』

森に逃げていくイーライに向かって、パーシーが呼びかけます。

「あなたを 何て呼べばいいかしら?
〈ジョニー・B〉って呼ぶのはどう?
〈ジョニー・B〉は自分に何が起きたか分からないの。
あなたも? とりあえずそう呼ぶわ 〈ジョニー・B〉!」

・・不思議ですね。

服役中の経験からパーシーは、
食堂を売るために、申し込み金を取って「作文コンテスト」をやるというアイデアを提案します。
半信半疑で始めたものの反響が大きくなり、
これがシェルビーやハナ、そして町中の人々を巻き込んでいきます。

ところがここに、ネイハムの邪魔が入ります。
誤解のために山狩りの的にされてしまったイーライを助けようとして、パーシーが命を落とすことに・・

のちにネイハムは語ります。

「私は彼女をよく知っているつもりで実は何も知りませんでした。
ただのよそ者で、
母や家族や町に悪い影響を及ぼすと思っていました。
そして私は彼女を泥棒と思い込み、
叔母の金庫から金を出しました。盗まれないようにです。
彼女を知っているつもりでした。
そう思い込んだ私は、誰よりも彼女の死に責任があります。
彼女を知っているつもりでしたがそれはまったくの誤りでした。
なにも知らなかったのです」

white angel wing isolated

パーシーは傷つき死ぬことで人々を変え、幸せをもたらす・・
贖罪の天使なのかも分かりません。

ハナから「あなたには頭はないの?」
ネイハムからも「君にそんな頭はないからさ」
・・なんて言われていたシェルビーも変わります。

排他的な町の人々も、新しい人間を受け入れることが出来るように・・

やがてまた、バスを降りたシングルマザー、クレア。
コンテストの入賞者で「The Spitfire Grill」の新しいオーナーです。
ハナの、そして町の人々の歓迎を受けてやって来ます。

「この森で天使はバスを降りた」は、
意味深く見応えのある、寓話であり、ファンタジーですね。

イヤア、映画ってほんとーにいいもんですね。
それでは皆様、またお会いしましょう。


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